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戦場カメラマン 渡部陽一さんに、当会理事の葉月のりこが対談形式でインタビューしました。
その模様を全二回に分けてお送りいたしております。今回は、第2回です。

PROFILE

渡部陽一さん
渡部陽一
1972年9月1日 静岡県生まれ。静岡県立富士高等学校―明治学院大学法学部卒。
学生時代から世界中の紛争地域を専門に取材を続ける、日本で今、最も有名な戦場ジャーナリスト。タレントとしても、独特の語り口と機転の効いたコメントが大人気。
朗読についても、「渡部陽一さんの朗読は安定した安心感、安らぎを感じさせる音声。」
(日本音響研究所主任研究員 鈴木創さん)
「ふと、もしかしたら神様は渡部さんみたいな声をしてるんじゃないか思いました。」
(千原ジュニアさん)
「渡部さんの朗読を聞いていると、声の源は言葉ではない、魂なのだと思う。その声は私たちの日々の暮らしを貫いて、ゆったりと流れる川のようだ。」(谷川俊太郎さん)と高い評価を得ている。
朗読CDとして、「渡部陽一の世界名作童話劇場 日本編」、「Father's Voice」の二作があり、きわめて高い評価を得ている。
葉月のりこ
葉月のりこ
山口県生まれ。(社)日本朗読検定協会理事。
プチプラージュ朗読教室 代表。
学生時代に演劇をたしなむ。
FM局のアナウンス講座、TV局のナレーター研究科、専科で朗読の基礎と応用を学ぶ。
2010年に日本朗読検定協会認定プロフェッサーとなり、2011年に理事に就任。
演劇やナレーションを学んだ経験を活かした指導が好評。

「朗読の魅力、朗読で伝えたいと思ったこと」

渡部陽一さん

葉月: 渡部さんは、朗読の魅力はどんなところにあると思いますか?

渡部さん: 戦場の、電気もガスも、水道もない村のおじいちゃんが、子どもたちに、食べ物を手にする方法、着ている物の身だしなみ、勉強の仕方などを、ことばで、地域の子どもたちにお話をしていたんです。 それを、毎日聞いている中で、おじいちゃんは、速く話すこともあれば、ゆっくり話したり・・・演技をして、ドキドキさせるようなこともありました。 同じことばなのに、話し方や、間の取り方、少しの演技を入れることで、聴いている子どもたちに、喜びや不安、やさしさ・・・ものすごく色々な反応が見えたんです。

朗読の魅力は、“聴いている人の心に変化を与えることができること”ではないでしょうか。

僕が朗読をする時も、文章と向き合い、どのように朗読で表現するかを考えました。 そして、ことばの持つ、やさしさや、あたたかみ、力、表の意味、裏の意味、というものを、感じ取るという体験をしました。 一つの文章を多面的に感じることができる。 これも朗読の魅力の一つだと思います。

葉月: それで、朗読を始めようと思われたのですね?

渡部さん: 僕が朗読を始めた理由は、相手と向き合ってするお話、朗読を見て、「僕も、写真で伝える以外に、戦場の、あのおじいちゃんがやっていたように、ことばで、日本の子どもたちに、戦場に暮らす人々の思いを伝えることができないだろうか」という思いが出てきたからなのです。 僕が、朗読を始めようと思った原点。 それを、今回の朗読CD、「Father’s Voice」に込めました。

「写真と朗読の共通点」

葉月: 実は、私は写真も趣味なんですが、昔、アナウンスの学校に行ったときに、それを申しましたら、「あなたは、表現をすることが好きなんですね」と言われて、写真も朗読も、自分を表現するという共通点があると言われて、あぁ、そうだなぁと。やっぱり人と触れ合う中で良い物が生まれていくということが、表現の共通点のような気がします。

渡部さん: 本当に、そうですね。 写真も、朗読も、「どうしたら観る人、聴く人に伝わるだろう」と考えるところが共通点だと感じています。

「世界中に飛び出していく原動力」

渡部陽一さん

葉月: 戦場は、とても危険だと思うのですが、どうしてそんな危険な場所に行ってでも取材をしようと思われるのですか?

渡部さん: 僕は、カメラマンとして、世界中をまわって行く中で、すごく、うれしかったことがあります。 それは、世界中に、家族のような友達が出来たことです。 パキスタンにも、アフガンにも、イラクにも、ナイジェリアにも。 戦場カメラマンとして現地に戻る、というのは、世界中に出来た友人たちに、また会いに行くことでもあります。 これも世界中に飛び出していく、僕の、大きな力になっています。

「世界各国の話し方の違い」

葉月: 渡部さんは、世界中を取材していて、色々な国の方々のお話を聞いてこられたと思いますが、日本と比較して、何か気づかれたことはありますか?

渡部さん: 僕は、取材先で、外国の人のお話を聴いていて、共通していると感じたことは、非常にゆったりとお話をする方が多いということでした。僕は、「どうして、18歳や、20歳くらいの若者が、こんなにどっしりと、ゆったりと話すのだろう?」と思い、最初は、何か特別な訓練でもしているのかと思ったのですが、イラクでも、アフリカでも、南米でも、中央アジアでも、早口で、どんどん駆り立てるように話すという風習は、無いと感じました。

葉月: 日本は情報社会で、色々な物に溢れているので、ことばの大切さというのを忘れがちなのかもしれませんね・・・。

渡部さん: ことばの出る速さ、スピード感というのは、日本ならではの魅力で、武器でもあるんですけれども、私の日常は日本だけでなく、戦場にもあるので、長期の取材から帰国した時には、驚くことが多いです。 早口と言えば・・・中国はもっと速いんですけれども(笑)。 早口は、アジア、極東方面の特徴かもしれません。(笑)

葉月: 戦場で、現地の人々が子どもたちに、朗読や、読み聞かせをしているのを見かけたということはありますか?

渡部陽一さん

渡部さん: ありますね。とても、よくしていました。私が行った戦場では、暗記をしている物語を、丁寧に、朗読していくことが多いですね。 「さぁ、みなさんお話をしますよ!」というような、環境を作って、朗読をするという光景をよく見ました。

葉月: 昔は、日本でも、子どもたちが、おじいちゃんや、おばあちゃんのところに集まって、お話を聞くということがあったんですけれども、最近はちょっと減ったように感じます。

渡部さん: まさに、その光景です。 ただ、日本のように、立派な絵本では無く、ボロボロの、ガリ版刷りのような絵本なんですけれども、それを読んでいました。 朗読は、世界中のどこでも、地域の文化を伝えていく大切な入り口のひとつだと思います。

葉月: お話を伺って、朗読CDも素晴らしいのですが、やはり、直に子どもたちに聴かせてあげて欲しいと思いました。 そういう活動もやっておられるのですか?

渡部さん: 実際、小学校、中学校に「戦場の子どもたちの声」というテーマで、戦場に暮らす子どもたちの声を、写真や、お話で伝えています。 そこでは、日本の子どもたちが写真を観て、お話を聞いて感じたことを、積極的にぶつけてくるんです。 だから、ことばや朗読を架け橋に、戦場の子どもたちの声を、伝えていきたいと思っています。 また、日本の子どもたちや、大人の方々に、どんどん動ける時には、直接向き合って、お話をしたり、逆に、僕がお話を聴いてみたいとも思っています。

葉月: 渡部さんは、子どもたちと朗読の共演、合作をしてみたいと思いますか?

渡部さん: そんな機会を持ちたいと思います。

葉月: きっと子どもたちも喜ぶでしょうね! ぜひ、私達も協力させていただきたいと思います。今日はありがとうございました!

記念撮影

インタビュー前遍を見る

2011年10月27日 グランドハイアット東京 2F FRENCH KITCHENにて

取材:葉月のりこ /写真・構成:村山博之 /レイアウト:國府裕之
(2011年11月 一般社団法人 日本朗読検定協会 無断転載禁止)

(社)日本朗読検定協会